「時間もお金もかけて採用したのに、1年も経たずに辞めてしまった…」
外国人介護士の離職は、施設にとって大きな痛手です。採用コストの問題だけではありません。一緒に働いてきたチームの士気にも影響しますし、ご利用者との関係もゼロからやり直しになります。
この記事では、外国人介護士の定着率を上げるために施設ができる5つの取り組みを、離職の原因と合わせて整理しました。「採用したら終わり」ではなく、「採用してからが本番」という視点で読んでみてください。
外国人人財の受け入れに不安がある方は、まず外国人介護士の受け入れが不安な施設長へ|よくある5つの不安と解決策で全体像をご確認ください。
外国人介護士の離職率はどのくらいか
日本人介護職員との比較
「外国人はすぐ辞める」というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、日本人介護職員でも一定の離職は起きており、外国人介護士だけが特別に辞めやすいと単純には言えません。
介護労働安定センターの調査では、日本人介護職員の離職率は令和4年度14.4%、令和5年度13.1%、令和6年度12.4%と推移しています(介護労働安定センター「介護労働実態調査」)。介護業界全体で定着改善の動きは見られるものの、外国人介護士についても採用後の支援体制が重要であることに変わりありません。
離職する外国人介護士の本当の理由
全国老人福祉施設協議会が2025年に公表した「令和6年度 外国人介護人材定着度調査」では、過去5年間の離職理由が明らかになっています。
- 介護以外の職種への転職: 52.1%
- 賃金への不満: 36.3%
- 病気のため: 26.8%
- 他の介護施設への転職: 22.3%
注目すべきは、離職理由の第1位が「介護以外の職種への転職」であることです。特定技能制度では同一分野内での転職が認められています。他の業種と比較されたとき、「この施設で介護を続けたい」と思える環境があるかどうかが、定着の分かれ目になります。
一方、同調査で外国人介護人財が「今の職場が良い」と感じる要素も示されました。
- 職場内のコミュニケーションが良好: 66.5%
- 悩みや不満の相談体制が整っている: 55.7%
- 希望に合わせたシフト調整: 52.5%
- 有給休暇が取得しやすい: 52.2%

「給料が良い」は39.8%にとどまっています。賃金ももちろん大事ですが、それ以上に「職場の人間関係」と「相談できる安心感」が定着を支えていることがわかります。
それを踏まえた上で、外国人介護士の定着率をあげる取り組みを5つ紹介します。
生活基盤と職場環境を整える
取り組み① 生活の安心をつくる
外国人介護士にとって、日本での生活は仕事と同じくらい大きな課題です。住居探し、銀行口座の開設、ゴミの分別ルール、病院の受診方法。日本人には当たり前のことが、来日したばかりの外国人介護士には一つひとつ壁になります。
この壁を放置すると、生活の不安が仕事への集中を妨げ、やがて「この国でやっていけるのだろうか」という不安な気持ちにつながっていきます。
生活支援で押さえるべきポイントは3つです。
- 住環境の整備: 住居の手配と家賃補助。通勤しやすい場所に安心して暮らせる住まいがあるだけで、定着率は大きく変わります。生活相談・支援は老施協調査でも実施率の高い取り組みでした。
- 行政手続きのサポート: 転入届、在留カード関連の届出、マイナンバーなど。入職初期に一緒に手続きを進める体制をつくります。
- 生活インフラの案内: スーパー、病院、交通機関、ハラル食材の入手先など、日常生活に必要な情報をまとめて渡します。母語で書かれた生活ガイドがあれば理想的です。
取り組み② 職場に「居場所」をつくる
日本語での業務コミュニケーションは、外国人介護士にとって常に緊張を伴うものです。言葉の壁だけではなく、日本特有の「空気を読む」文化や暗黙のルールに戸惑うことも少なくありません。外国人介護士とのコミュニケーションについて詳しく知りたい方は「外国人介護士とのコミュニケーション実態」もご覧ください。
職場に居場所をつくるための工夫は、特別なものではありません。
- メンター制度の導入: 日本人職員1名を相談相手として指名します。業務だけでなく、日常の困りごとも気軽に話せる関係をつくることが目的です
- チームでの受け入れ体制: 教育担当を一人に集中させず、チーム全体で関わる姿勢を持ちます。「あの人だけの仕事」にしないことが大切です
- わかりやすいコミュニケーション: 申し送りの際に要点を書面でも共有する、指示は短く具体的に伝えるなど、日本人同士でも役立つ工夫が外国人介護士の安心感にもつながります
「定着支援をどう始めればいいかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。ASCareでは、介護現場を知るスタッフが支援サポートを行っております。「定着支援をどう始めればいいかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。
キャリアと学びの道筋を見せる
取り組み③ キャリアパスを可視化する
「5年後に自分はどうなるのか」。この問いに答えられない職場では、外国人介護士は将来に不安を抱えたまま働くことになります。
特定技能1号の在留期間は最長5年です。しかし、介護福祉士の国家資格を取得すれば在留資格「介護」へ移行でき、在留期間の制限がなくなります。家族の帯同も可能になる道が開けます。制度の詳細は特定技能「介護」とは?制度の仕組みと受け入れ条件をわかりやすく解説で解説しています。
この道筋を、入職の早い段階から本人に伝えることが大切です。
- 1年目: 介護の基礎技術を習得。日本語能力試験N3を目指す
- 2〜3年目: 実務者研修を受講。介護福祉士の試験対策を開始する
- 4〜5年目: 介護福祉士の国家試験に挑戦。合格すれば在留資格「介護」へ移行
キャリアパスを「見える化」するだけでなく、合格後のポジションや処遇の変化まで示せると、学習意欲と仕事への意欲が同時に高まります。外国人新入社員の指導役やリーダーへの昇進など、施設内での具体的な将来像を描けることが定着につながっていきます。
取り組み④ 学び続けられる環境をつくる
キャリアパスを示しただけでは不十分です。実際に学べる環境がなければ、目標は絵に描いた餅になってしまいます。教育・研修の具体的な進め方は「外国人介護士の教育・研修はどう進める?即戦力化のポイント」で詳しく紹介しています。
- 日本語学習の機会提供: 業務後のオンライン学習、週1回の日本語教室、介護専門用語の勉強会など。厚生労働省も介護分野の日本語学習教材を無料で公開しています。
- 介護福祉士試験の対策支援: 学習時間の確保(シフト上の配慮)、受験費用の補助、模擬試験の機会提供。特定技能で働きながら3年以上の実務経験を積み、実務者研修を修了することが受験要件になります。
- 専門技術のスキルアップ: 認知症ケア、口腔ケア、看取りケアなど、専門領域の研修への参加を後押しします。技術が上がれば自信もつき、「この施設で成長できている」という実感が生まれます。

心の支えをつくる
取り組み⑤ 感情面のサポートを仕組み化する
異国の地で働くストレスは、日本人が想像する以上に大きいものです。文化の違い、家族と離れて暮らす寂しさ、言葉にしづらい職場での小さな疎外感。こうした感情面の負担が蓄積すると、ある日突然「辞めたい」という判断につながることがあります。
感情面のサポートは、個人の善意に頼るのではなく、施設の仕組みとして組み込むことが重要です。
- 母語での定期面談: 月1回でも母国語で本音を話せる場があると、不安は大きく和らぎます。通訳を介した面談でも効果があります。
- 同国出身者との交流機会: 同じ施設や近隣施設で働く同国出身の仲間との交流は、孤立感を防ぐ大きな力になります。
- ストレスサインの共有: 「最近笑顔が減った」「遅刻が増えた」「休憩中に一人でいることが多くなった」など、周囲が気づける体制をチームでつくります。
離職の予兆を見逃さない
定着支援は「問題が起きてから対処する」のでは遅い場面が多くあります。離職を考え始めている外国人介護士は、直接「辞めたい」とは言いにくいものです。
以下のサインが見られたら、早めに声をかけてください。
- 有給休暇の取得が急に増える
- 同僚との会話が減る
- 業務中のミスが目立つようになる
- 在留資格や転職について質問し始める
- 母国への送金額や帰国の話題が増える
こうした変化に気づいたら、責めるのではなく「何か困っていることはないか」と尋ねる姿勢が大切です。早期に悩みをキャッチし、対応できる体制があるかどうかが、定着率を分ける大きなポイントになります。
ASCareでは、外国人介護士の定着を**「生活・仕事・学習・感情」の4つの軸**で支援しています。
| 軸 | 具体的な支援内容 |
|---|---|
| 生活 | 住居探し、行政手続き、銀行口座開設、生活インフラの案内 |
| 仕事 | シフトや業務内容の調整、職場の人間関係への寄り添い、メンター制度の導入支援 |
| 学習 | 日本語学習の継続支援、介護福祉士取得に向けた学習計画の策定 |
| 感情 | 母国語での定期面談、同国出身者との交流機会、ストレスの早期察知 |

この記事でお伝えした5つの取り組みは、そのままASCareの4軸定着支援と重なります。取り組み①が「生活」、取り組み②が「仕事」、取り組み③④が「学習」、取り組み⑤が「感情」に対応しています。
定着支援のスタッフには介護現場の経験者を配置しています。制度や手続きだけでなく、現場のリアルを知っている人間が寄り添う。その積み重ねが、外国人介護士からの信頼につながっています。
まとめ
外国人介護士の定着率を上げるための5つの取り組みを見てきました。
- 取り組み①(生活支援): 住居・行政手続き・生活インフラの整備で、暮らしの不安を取り除く
- 取り組み②(職場環境): メンター制度やチームでの受け入れ体制で、職場に居場所をつくる
- 取り組み③(キャリアパス): 介護福祉士への道筋を早期に示し、将来の見通しを持てるようにする
- 取り組み④(学習支援): 日本語学習や資格取得の機会を仕組みとして提供する
- 取り組み⑤(感情サポート): 母語での相談窓口や仲間との交流で、孤立を防ぐ
離職の原因は一つではありません。だからこそ、対策も一つでは足りません。生活・仕事・学習・感情の4つの軸をバランスよく整えることが、長く安心して働ける環境づくりにつながります。
外国人介護士は、共に現場を支え、共に育っていく仲間です。「採用して終わり」ではなく、「入職してからの丁寧な支援」が、信頼を育て、定着率を高めていきます。
参考リンク
- 介護労働安定センター「介護労働実態調査」(令和6年度)
- 全国老人福祉施設協議会「令和6年度 外国人介護人材定着度調査」(2025年公表)
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」
- 出入国在留管理庁「特定技能制度について」
ASCareは介護事業50年以上の歴史を持ち、累計3,000人以上の外国人介護士を受け入れてきました。現地の送り出し機関とビジネス提携を結んでいる為、紹介料は無料です。教育から紹介、入職後の定着支援まで一気通貫で寄り添います。