「外国人のスタッフと、ちゃんとコミュニケーション取れるのかな…」
外国人介護士の受け入れを検討している現場リーダーの方から、最も多く聞く声がこの不安です。介護はご利用者の身体と生活に直接かかわる仕事です。「言葉が通じない」ことへの心配は、ごく自然なものだと思います。
けれども、実際に外国人介護士と一緒に働いている施設からは、「思っていたより通じる」「困る場面は限られている」という声が多く返ってきます。コミュニケーションの問題は、日本語力だけの話ではありません。伝え方を少し変えるだけで、大きく改善できるものです。
この記事では、外国人介護士とのコミュニケーションで実際に起きること、その具体的な対処法をまとめました。
外国人人財の受け入れ全般についてまず全体像を知りたい方は「外国人介護士の受け入れが不安な施設長へ|よくある5つの不安と解決策」もあわせてご覧ください。

外国人介護士の日本語力はどの程度か
特定技能「介護」に求められる日本語レベル
特定技能「介護」で来日する外国人財は、日本語能力試験(JLPT)N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に加え、介護日本語評価試験にも合格しています(制度の詳細は「特定技能「介護」とは?制度の仕組みと受け入れ条件をわかりやすく解説」で解説しています)。N4は「基本的な日本語を理解できる」レベルで、日常会話やゆっくりした説明は理解できます。「食事介助」「入浴介助」「排泄介助」といった介護の基本的な声かけは、入職時点で習得済みです。
特定技能の外国人財は、試験を通じて一定の日本語力と介護の知識を証明した上で来日しているため、「日本語がまったく通じない」というのは起こるケースが少ない問題です。
N4とN3で現場はどう変わるか
N4は「基本的な日本語を理解できる」レベル、N3は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」レベルです。この1段階の差は、現場では意外と大きく感じられています。
N4で来日した場合、日常的な声かけ(「お食事ですよ」「右手を上げてください」)はしっかり通じます。ただし、申し送りの口頭説明や、込み入った状況の報告にはまだ時間がかかることがあります。
N3になると、介護記録の読み書きや、ご利用者のご家族への簡単な説明もできるようになります。来日前の教育に力を入れている紹介元では、N3で入職する人財も増えています。
大切なのは、「N4だから無理」ではなく、「N4の人にはN4に合った伝え方をする」という現場側の姿勢です。

介護現場で実際に困る問題とはどんなものか
「漠然と不安」な状態が一番困ります。実際に困る問題を具体的に知っておくと、対処法も見えてきます。累計3,000人以上の外国人財の受け入れ実績から見ると、外国人介護においてのコミュニケーションで困る問題は主に3つに絞られます。
①申し送り・介護記録で起きやすい問題
現場スタッフから最も多く聞く困りごとが、申し送りと介護記録です。
申し送りは口頭で行われることが多く、話すスピードが速い、略語が飛び交う、複数の情報が一度に伝えられるなど、日本人同士でも聞き漏れが起きやすい場面です。外国人スタッフにとっては、さらにハードルが上がります。
介護記録も難しいポイントです。「傾眠がみられる」「嚥下状態に注意」など、普通の日本語学習では出てこない表現を書く必要があります。記録が書けないと、本人の自信にも影響します。
②専門用語・方言・敬語の壁
日本語能力試験(JLPT)で測れる日本語力と、介護現場で必要な日本語力は別物です。
専門用語:
「褥瘡(じょくそう)」「拘縮(こうしゅく)」「誤嚥(ごえん)」といった医療・介護の専門用語は、日本人の新人職員でも戸惑うことがあります。外国人スタッフにとっては、辞書にも載っていない言葉に見えてしまうこともあります。
方言:
地方の施設では、ご利用者が方言で話しかけることがあります。標準語で日本語を学んだ外国人スタッフには、まったく別の言語に聞こえることも少なくありません。
敬語:
ご利用者やご家族への丁寧な言葉遣いは、介護現場では欠かせません。しかし日本語の敬語体系は複雑で、「お召し上がりになりますか」と「食べますか」が同じ意味だと気づくまでに時間がかかることがあります。
③文化の違いから生まれるすれ違い
言葉が通じていても、文化の違いからすれ違いが生まれることがあります。
たとえば、東南アジアの国々では「目上の人に反論しない」という文化が根づいています。わからないことがあっても「はい」と答えてしまい、実際にはうまく伝わっていなかった、というケースは珍しくありません。
こうしたすれ違いは、言葉の問題ではなく「伝わったかどうかを確認する仕組み」の問題です。日本人スタッフ同士でも起きうることですが、文化が異なる場合はより意識的に確認する必要があります。
今日からできるコミュニケーションの工夫5つ
現場で困る問題が知っておくことで、対策も見えてきます。伝え方を少し変えるだけで、コミュニケーションは大きく改善します。難しく考えずに、簡単にできるものから取り入れてみましょう。
①「やさしい日本語」で伝える
「やさしい日本語」とは、外国人にも伝わりやすいように日本語を調整する方法です。難しい文法知識ではなく、「短く、はっきり、具体的に」伝えるだけで効果があります。
変換例:
- 「臥床されている方のバイタルを測定してください」→「ベッドで寝ている○○さんの体温と血圧を測ってください」
- 「配膳お願いね」→「食事を部屋に持っていってください。○○さんからお願いします」
- 「様子を見ておいて」→「○○さんを30分ごとに見に行ってください。変わったことがあれば教えてください」
ポイントは3つあります。
①曖昧な指示を避けること。
②主語と目的語を省略しないこと。
③一度に伝える情報を1つに絞ること。
この3つを意識するだけで、伝わり方が変わります。日本人の新人職員への指導にも効果的です。
また、マニュアルや掲示物にふりがなを振るのもやさしい日本語の活用につながります。
どのように言い換えすればよいか、迷った時にはこちらもぜひ参考にしてみてください。

②視覚ツール・テンプレートを活用する
言葉だけに頼らず、目で見てわかる仕組みをつくることが大切です。
- 介護記録のテンプレート: 「食事摂取量」「水分摂取量」「排泄回数」「バイタル」など、毎日記録する項目をテンプレート化します。定型文を選ぶ方式にすれば、日本語の文章力が追いつかない時期でも正確な記録が残せます。
- 申し送りシート: 口頭だけでなく、要点を書いたシートを併用します。「誰が・何が・どう変わったか」の3点だけ記入する様式にすると、抜け漏れが減ります。
- 緊急時フレーズカード: 「○○さんが転倒しました」「意識がありません」「すぐ来てください」など、緊急時に使うフレーズを母国語の対訳つきでカードにして携帯させます。
国際厚生事業団(JICWELS)では、介護専門用語集を英語・インドネシア語・ベトナム語・ミャンマー語など13言語で無料公開しています(JICWELS 介護専門学習のためのツール)。現場の学習教材として活用できます。
③理解度を「確認する仕組み」をつくる
「わかりましたか?」と聞くと、外国人スタッフは「はい」と答えがちです。これは日本語力の問題ではなく、文化的な背景によるものです。
確認の方法を工夫しましょう。
- 「今の説明を、自分の言葉で言ってみてください」と復唱してもらう
- 指示を出したあと、最初の1回は一緒にやってみる
- 「わからなかったら聞いてね」ではなく、「15時にもう一度確認しますね」と確認のタイミングをこちらから決める
確認は信頼関係を壊すものではありません。むしろ「あなたの理解を大切にしている」というメッセージになります。
「コミュニケーションの工夫を現場でどう進めればいいかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。介護現場を知るスタッフが、貴施設に合った受け入れ体制づくりを一緒に考えます。
④入職前教育が「通じる現場」をつくる
なぜ来日前の教育が重要なのか
コミュニケーションの問題を「入職してから何とかする」のか、「入職前に手を打つ」のかで、現場の負担はまったく変わります。
現場で困る場面の多くは、介護特有の日本語を知らないことに起因しています。逆にいえば、介護の日本語を来日前に学んでおけば、入職初日から「通じる」状態でスタートできます。
⑤介護の日本語を学んでから配属する仕組み
ASCareでは、即戦力育成型の教育プログラムを採用しています。来日前に最大6ヶ月間の教育期間を設け、一般的な日本語に加えて、介護現場で使う表現を集中的に学びます。
具体的には、以下のような内容です。
- 介護の声かけ表現(食事・入浴・排泄・移乗の場面別)
- 申し送りの聞き取りと報告の練習
- 介護記録の基本的な書き方
- 敬語の基礎(ご利用者・ご家族への言葉遣い)
- 日本の介護施設の生活マナー
教育してから紹介する。この順番が、現場のコミュニケーション問題を根本から減らす仕組みです。「現場でゼロから教える」負担を最小限に抑えることで、日本人スタッフの余裕も生まれます。教育・研修の進め方についてさらに詳しく知りたい方は「外国人介護士の教育・研修はどう進める?即戦力化のポイント」もご覧ください。
現場でうまくいく施設が共通してやっていること
メンター制度と定期面談
外国人スタッフとのコミュニケーションがうまくいっている施設には、共通するパターンがあります。そのひとつが、メンター制度です。
外国人スタッフ1人に対して、相談相手となる日本人職員を1人決めます。「困ったときに誰に聞けばいいか」が明確になるだけで、外国人スタッフの安心感は大きく変わります。
定期面談も有効です。月に1回、15分でもかまいません。「仕事で困っていることはないか」「日本語で難しいと感じることはないか」を聞く場があるだけで、問題が小さいうちに対処できます。
メンターには手当をつけることが望ましいです。「誰かが善意でやる」のではなく、「組織として支える仕組み」にすることで、安定して機能します。
「日本人側も変わる」という意識
コミュニケーション問題を「外国人の日本語力の問題」としてだけ捉えると、うまくいきません。うまくいっている施設では、日本人スタッフ側も伝え方を変えています。
厚生労働省の「外国人介護職員がいきいきと活躍できる職場づくり」ガイドブックでも、受け入れ側の環境整備の重要性が強調されています(厚生労働省 外国人介護職員の受入れと活躍支援に関するガイドブック)。
「外国人スタッフに合わせて話し方を変える」のではなく、「誰にとってもわかりやすい伝え方に変える」。この意識の転換が、コミュニケーション問題の本質的な解決につながります。やさしい日本語も、テンプレートも、確認の仕組みも、実は日本人の新人職員にとっても助かる工夫です。
外国人財の受け入れをきっかけに、現場全体のコミュニケーションが改善した、という施設は少なくありません。定着率の改善策をさらに掘り下げた記事「外国人介護士の定着率を上げる方法|離職を防ぐ5つの取り組み」もあわせてご覧ください。
まとめ
外国人介護士とのコミュニケーション問題について見てきました。
- 特定技能「介護」の外国人財は、JFT-BasicまたはJLPT N4以上に加え、介護日本語評価試験に合格して来日している。「日本語がまったく通じない」は誤解です
- 現場で困る問題は主に3つ。申し送り・介護記録、専門用語・方言・敬語、文化の違いによるすれ違い
- 対策に特別な投資は不要。やさしい日本語、視覚ツール、確認の仕組みで大きく改善できます
- 入職前に介護の日本語を学んでから配属する即戦力育成型の仕組みが、問題の根本的な予防になります
- 現場でうまくいく施設は、外国人の日本語力だけでなく「日本人側の伝え方」も変えています
見落とされやすいのが、日本人側のコミュニケーションの癖です。早口、曖昧表現、省略、略語の多用は、外国人介護士に限らず新人全般に伝わりにくい要素です。つまり、外国人介護士への対応は特別対応ではありません。現場全体の伝え方を見直す機会でもあります。伝え方が整うと、チーム全体のコミュニケーション品質も上がります。
株式会社ASCareでは、初めて特定技能を雇用する際に、職員向けの「受け入れガイダンス」を実施しています。自社で特定技能を雇用している株式会社ASCareならではのノウハウを知ることができ、実際にガイダンスを受講した法人様からは受け入れ時の不安要素を払拭する一助となっているとコメント頂いております。
異なる言語や文化を持つ仲間と共に働く現場には、最初は戸惑いもあります。しかし、丁寧な準備と小さな工夫の積み重ねが、安心して働ける環境をつくっていきます。外国人財は急場しのぎの手段ではなく、共に介護現場を支え、共に成長していく仲間です。外国人スタッフが「ここで働いてよかった」と思える環境つくりを今日から一緒に考えていきましょう!
参考リンク
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」
- 厚生労働省「外国人介護職員の受入れと活躍支援に関するガイドブック」
- 厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」
- 出入国在留管理庁「特定技能制度について」
- 国際厚生事業団(JICWELS)介護専門学習のためのツール
ASCareは介護事業50年以上の歴史を持ち、累計3,000人以上の外国人財を受け入れてきました。紹介料は無料です。教育から紹介、入職後の定着支援まで一気通貫で寄り添います。