「外国人の介護士を受け入れたら、利用者さんとの間でトラブルが起きないだろうか…」
そう心配される施設長や現場職員の方は、決して少なくありません。言葉や文化が異なるスタッフがご利用者のケアにあたるのですから、不安を感じるのはごく自然なことです。
この記事では、外国人介護士と利用者の間で実際にどんなトラブルが起きやすいのかを整理し、それを未然に防ぐための具体的な取り組みをまとめました。厚労省の調査データと、累計3,000人以上の外国人財を受け入れてきた現場の知見をもとにお伝えします。
外国人介護人財の受け入れについてまず知りたい方は「外国人介護士の受け入れが不安な施設長へ|よくある5つの不安と解決策」もあわせてご覧ください。
外国人介護士と利用者のトラブルは実際に多いのか?
厚労省調査が示す利用者の満足度
「トラブルが多いのでは」というイメージを持たれがちですが、実態は異なります。
厚生労働省のガイドブックでは、EPA介護職員や在留資格「介護」を持つ外国人などを含む外国人介護職員について、介護サービスの質を「満足」と評価したご利用者・家族は65.1%、「満足できない」は2.1%でした(厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」)。

特定技能「介護」の制度について詳しく知りたい方は「特定技能「介護」とは?制度の仕組みと受け入れ条件をわかりやすく解説」をご覧ください。
つまり、大多数のご利用者は外国人介護士のケアに満足していることがわかります。「外国人だから問題が起きる」というわけではないことを、データが示しています。
「トラブル」の正体は文化の違いによる小さなすれ違い
現場で「トラブル」と呼ばれるものの多くは、深刻な事故や重大なクレームではありません。文化や習慣の違いから生まれる小さなすれ違いがほとんどです。
たとえば、声かけのタイミングが少し違う。お辞儀の角度が浅い。敬語のニュアンスが微妙にずれる。こうした細かな違和感が積み重なると、ご利用者やご家族の不安につながることがあります。
裏を返せば、こうしたすれ違いは事前の準備と丁寧なコミュニケーションで防げるものです。次に具体的にどんな摩擦が起きやすいのかを見ていきましょう。
介護現場で起きやすい3つの摩擦とその背景

①コミュニケーションのすれ違い
最も多いのが、言葉に関する摩擦です。特定技能の外国人介護士は、日本語能力試験N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に加え、介護日本語評価試験に合格していますが、介護現場特有の表現や方言、曖昧な日本語表現に戸惑う場面があります。
「ちょっと待ってね」が何分なのか。「大丈夫ですか?」と聞かれて「大丈夫です」と答えたが、実は大丈夫ではなかった。このような日本語の曖昧さは、日本人同士でも誤解が生まれることがあります。外国人財にとっては、なおさら難しい部分です。こうした小さなすれ違いがご利用者のケアに直接影響することがあります。
コミュニケーションの課題と対処法については「「日本語が通じない」は誤解?外国人介護士とのコミュニケーション実態」でも詳しく解説しています。
②生活習慣・文化の違いによる戸惑い
介護は日常生活に深く関わる仕事です。食事、入浴、身だしなみなど、文化による違いが表面化しやすい場面が多くあります。国や文化によってパーソナルスペースの感覚が異なる場合があり、親しみを込めて距離を縮めたつもりが、ご利用者にとっては近すぎると感じられることもあります。
- 食事介助:箸の使い方に慣れていない外国人財が、食事介助でぎこちなくなることがある
- 声の大きさやトーン:母国では普通の声量でも、日本のご高齢者には大きく聞こえることがある
いずれも悪意があるわけではなく、「当たり前」の基準が異なるだけです。こうした違いを理解したうえで、お互いに歩み寄る姿勢が大切になります。
③「外国人に介護されること」への心理的な抵抗感
ご利用者の中には、外国人スタッフにケアされること自体に抵抗を感じる方もいます。「日本語が通じるのか心配」「自分の体を触られるのに慣れない」といった不安は、ご高齢の方にとって自然な感情です。
大切なのは、こうした気持ちを否定するのではなく、まず受け止めること。そのうえで、信頼関係を少しずつ積み上げていく過程を丁寧に設計することが、施設側にできる最善の対応です。
トラブルを未然に防ぐ5つの取り組み

① ご利用者・ご家族への丁寧な事前説明
外国人スタッフが入職する前に、ご利用者とご家族への説明の場を設けます。「どんな人が来るのか」「どこの国の出身か」「日本語はどのくらい話せるのか」「介護の資格の有無」など。事前に情報が伝わっているだけで、最初の不安は大きく和らぎます。
環境の変化はご高齢の方にとって負担になりやすいものです。丁寧な事前説明は、信頼の土台をつくる第一歩になります。
② 外国人財への日本の介護文化の研修
日本の介護現場には、独自の文化があります。ご利用者を「○○さん」と名前で呼ぶこと。居室に入る前にノックすること。声をかけてから体に触れること。こうした一つひとつの所作は、ご利用者の尊厳を守るための基本です。
ASCareでは、半世紀に渡る介護業界でのノウハウを活かし、入国前の日本式介護を教育しております。入国する前に初任者研修相当の介護技術を習得した人財を、施設様へご紹介しています。
これらを来日前、あるいは入職前の研修で丁寧に伝えておくことが重要です。「教えなくてもわかるだろう」という前提は、文化が違えば通用しません。
③ 日本人職員とのペア配置(メンター制度)
入職直後の1〜2ヶ月は、日本人職員とペアで業務にあたる体制が効果的です。ご利用者にとっても、見慣れた日本人スタッフが一緒にいることで安心感が生まれます。外国人財にとっても、わからないことをすぐに確認できる環境になります。
バディ役の職員にはサポートを手厚く、負担が一人に集中しないよう配慮しましょう。
④ 日本人職員向けの異文化理解研修
研修は外国人財だけに行うものではありません。日本人職員にも、送出し国の文化や価値観、宗教的な配慮事項を知ってもらう機会が必要です。
「なぜお祈りの時間が必要なのか」「なぜ特定の食材を避けるのか」。背景を知れば、戸惑いは理解に変わります。双方が歩み寄ることで、チームとしての一体感が生まれます。
⑤ 定期的な振り返りの場をつくる
月に1回でも、外国人財・日本人職員・管理者が集まって「困っていること」を共有する場を設けましょう。小さなすれ違いが大きなトラブルに発展する前に、早い段階で拾い上げることが大切です。
外国人財が一人で悩みを抱え込まないよう、母国語で相談できる窓口を用意しておくことも有効です。
「受け入れ前にどんな準備をしておけばいいかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。累計3,000人以上の受け入れを支えてきたスタッフが、貴施設の状況に合わせた準備の進め方を一緒に考えます。
それでもトラブルが起きたときの対処法
初動は「事実の確認」から
トラブルやクレームが発生した場合、まず行うべきは事実の正確な確認です。ご利用者・ご家族の訴えを丁寧に聞き、外国人財にも状況を確認します。
感情的な対応や、一方的に外国人財を叱責することは避けてください。文化の違いによる行き違いなのか、本人の認識不足なのか、あるいはご利用者側の誤解なのか。原因を見極めたうえで、適切に対応することが大切です。
外国人財を孤立させない仕組み
トラブルが起きたとき、最も避けたいのは外国人財が孤立してしまうことです。「自分のせいで迷惑をかけた」と感じて殻に閉じこもると、離職につながりかねません。
ASCareでは、入職後も定着支援のスタッフが定期的に面談を行い、外国人財の不安や悩みに寄り添っています。母国語で相談できる窓口も用意しているため、日本語では伝えにくい本音も吸い上げることができます。トラブルを個人の問題にせず、チーム全体で受け止める姿勢が、結果として定着率の向上にもつながります。
外国人介護士の定着率を高める方法については外国人介護士の定着率を上げる方法|離職を防ぐ5つの取り組みで詳しくまとめています。
来日前教育が摩擦を減らす理由
介護技術だけでなく「日本の介護文化」を学ぶ
トラブルの予防で最も効果が大きいのは、入職前の段階での教育です。介護技術や日本語だけでなく、日本の介護現場で大切にされている価値観や所作を学んでから配属されれば、現場での摩擦は大幅に減ります。
ASCareの即戦力育成型プログラムでは、来日前に最大6ヶ月間の教育期間を設けています。介護の基礎技術と日本語に加えて、ご利用者への声かけの仕方、プライバシーへの配慮、チームでの報連相など、日本の介護文化に根ざした内容を丁寧に学びます。
教育済みの人財だから現場が安心できる
来日前にしっかり学んだ人財が配属されると、現場は「ゼロから教える」負担から解放されます。ご利用者に対する基本的なマナーが身についている状態でスタートできるため、最初の印象が違います。
ご利用者との信頼関係は、最初の出会いの瞬間から積み上がっていくものです。教育から紹介、入職後の定着支援まで一気通貫で対応する仕組みがあることで、施設も外国人介護士も安心して一歩を踏み出せます。
まとめ
外国人介護士と利用者のトラブルについて、現場の実態と予防策を見てきました。
- 「トラブルが多い」はイメージ先行 ― 厚労省調査ではご利用者の65.1%が満足。不満足はわずか2.1%
- 現場の摩擦の多くは文化の違いによる小さなすれ違い ― 悪意ではなく「当たり前」の差異
- 予防のカギは事前準備 ― ご利用者への説明、ペア配置、双方向の研修、振り返りの場
- トラブル発生時は事実確認が最優先 ― 外国人財を孤立させず、チームで受け止める
- 来日前教育の質がすべての土台 ― 介護技術に加えて日本の介護文化を学んだ人財なら、トラブルは最小限になる
外国人財の受け入れに「ゼロリスク」はありません。日本人同士でも、ご利用者との間にすれ違いが起きることはあります。大切なのは、互いを知る努力を重ねること。
介護が母体の登録支援機関ASCareでは、のべ3000名を支援してきたノウハウをもとに、伴走型も支援で施設様のお困りごとに寄り添い、改善策をご提案いたします。丁寧な準備を重ねて信頼できる関係を築くことができれば、ご利用者に安定したケアを届けることにつながります。
参考リンク
- 厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」
- 厚生労働省「外国人介護職員がいきいきと活躍できる職場づくりとは?」(ガイドブック)
- 公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会「外国人介護人材を受け入れる介護施設職員のためのハンドブック」
ASCareは介護事業50年以上の歴史を持ち、累計3,000人以上の外国人財を受け入れてきました。紹介料は無料です。教育から紹介、入職後の定着支援まで一気通貫で寄り添います。