外国人介護士を受け入れてみたものの、日本語教育をどこから始めればいいのかわからず、戸惑っている施設は少なくありません。声かけから記録、専門用語まで、教えるべきことは多岐にわたり、担当者一人が現場で抱え込んでしまうケースもよく見られます。
介護業界では今後もこの傾向が続くと見られています。厚生労働省の試算では、2040年度に必要とされる介護職員数は約272万人とされており、国内人材だけでの確保がますます難しくなる中、外国人介護士の受け入れは一時的な対応ではなく、長く付き合っていく前提で考える必要があります。だからこそ、日本語教育も場当たり的に行うのではなく、入職前から定着支援まで見据えた仕組みとして整えておくことが重要です。厚労省「介護人材確保に向けた取組」
この記事では、外国人介護士の日本語教育を現場任せにしないための考え方として、入職前教育・現場教育・定着支援まで含めた進め方を整理していきます。
外国人介護士に日本語教育が必要な理由
JLPTレベル(N3・N4)と現場で求められる日本語力のギャップ
外国人介護士が介護現場で働くには、日本語能力試験(JLPT)のN4〜N3程度が一つの目安とされています。N4は日常生活で使われる基本的な日本語を理解できるレベル、N3は日常的な会話や簡単な文章を理解できるレベルとされています。JLPTレベルと現場の日本語力の違いについては、外国人介護士の日本語力はどのくらい?N3・N4で現場はどう変わるか |株式会社ASCareでも詳しく解説しています。
在留資格によって異なる日本語要件
一口に「外国人介護士」といっても、在留資格によって求められる日本語要件は異なります。出入国在留管理庁「介護分野」詳しくはEPA・技能実習・特定技能・在留資格「介護」4つのルートを徹底比較 |株式会社ASCareでも解説しています。
| 在留資格 | 入国時の日本語要件の目安 | 試験・就労に関する備考 |
|---|---|---|
| 技能実習 | 介護職種ではN4程度が目安 | 2027年4月1日から育成就労制度の運用開始が予定されています。制度移行の詳細は、厚生労働省などの最新情報をご確認ください。 厚生労働省の介護分野における特定技能外国人の受入れ情報 |
| 特定技能1号 | JLPT N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストに合格 | 日本語試験に加えて、介護日本語評価試験と介護技能評価試験が原則必要です。技能実習2号を良好に修了した場合は日本語試験が免除されますが、介護職種以外の技能実習を修了した人は介護日本語評価試験の合格が必要です。技能試験の免除条件は、修了した職種などによって異なります。 出入国在留管理庁 介護分野 |
| 在留資格「介護」 | JLPTの一律の入国基準はありません | 介護福祉士国家試験への合格が前提となるため、実務上は高い日本語力が求められます。介護分野で、在留資格に基づき就労できる業務範囲に制限がない資格です。 |
| EPA介護福祉士候補者 | ベトナムはN3以上、インドネシア・フィリピンは入国時N4程度以上が目安 | インドネシア・フィリピンの候補者は、入国後の研修を経て就労時にN3程度が目安となる場合があります。原則として、候補者は受入れ施設で就労・研修し、在留期間中に介護福祉士国家試験の合格を目指します。国や年度により要件が異なるため、募集要項をご確認ください。 JICWELS 2026年度来日 EPA介護福祉士候補者の受入れ案内 |
※日本語要件や試験免除の条件は、在留資格・職種・年度によって異なる場合があります。申請前に出入国在留管理庁、厚生労働省、受入れ機関の最新情報をご確認ください。
このように、受け入れる外国人介護士がどの在留資格に該当するかによって、入職時点で前提とすべき日本語力も変わってきます。日本語教育の計画を立てる際は、まず自施設が受け入れている(または受け入れを検討している)在留資格の要件を確認したうえで、そこからどこまで底上げが必要かを考えることが出発点になります。
しかし、こうした試験のレベルと、実際に外国人介護士に求められる現場の日本語力には差があるのが実情です。目安として、次のような対応関係で考えるとイメージしやすくなります。
| 場面 | 求められる日本語力の目安 |
|---|---|
| 挨拶・簡単な声かけ | N4程度でも対応しやすい |
| 利用者・ご家族との会話 | N3程度が必要になりやすい |
| 申し送り・介護記録の作成 | N3〜N2程度の読み書き力が求められやすい |
※日本語力の目安は業務内容や職場の支援体制によって異なります。JLPTの級だけで判断せず、介護用語の理解や、聞く・話す・読む・書く力もあわせて確認しましょう。
このように、試験のレベルが高くても、介護特有の言い回しや専門用語には対応しきれない場合があります。ご利用者やご家族への声かけ、他職種との報連相、記録の作成など、現場では試験対策だけでは補いきれない日本語力が求められます。だからこそ、外国人介護士を受け入れたあとの日本語教育が欠かせないのです。
外国人介護士への現場での日本語の教え方
写真・イラスト・やさしい日本語を使った教え方

外国人介護士に現場で日本語を教える際、実践しやすいのが写真やイラストを使った説明です。言葉だけで伝えるよりも、動作や物の名前を視覚的に示すことで理解が早まります。また、二重否定や曖昧な表現を避けた「やさしい日本語」を意識することも、外国人介護士との日々のコミュニケーションを円滑にする工夫のひとつです。
介護専門用語の教え方の工夫
特に難しいのが、介護分野特有の専門用語です。「体位交換」「移乗」といった言葉は日常会話では出てこないため、一つひとつ丁寧に意味と場面をセットで教える必要があります。訪問入浴の現場で50年以上にわたり介護に携わってきた立場から見ても、専門用語は使う場面とセットで繰り返し伝えることで、外国人介護士の現場に初めて根づいていくものだと感じています。
また、報連相や記録については、決まった言い回しをテンプレート化しておくと、外国人介護士が自信を持って発言・記録しやすくなります。ご利用者やご家族との会話では、専門用語をそのまま使うのではなく、日常的な言葉に言い換えて伝える意識も欠かせません。
教える相手を一人に固定せず、複数のスタッフで見守るメンター体制をつくることも効果的です。教え方には一人ひとり癖があるため、複数人で関わることで表現の幅が広がり、外国人介護士にとっても質問しやすい相手が増えます。あわせて、1日の終わりに「今日わからなかった言葉」を一緒に振り返る時間を短くでも設けると、小さなつまずきが積み重なる前に解消できます。こうした小さな工夫の積み重ねが、現場全体のコミュニケーションを丁寧に支えていきます。現場での日本語の教え方については外国人介護士の教育・研修はどう進める?即戦力化のポイント |株式会社ASCareでも詳しく解説しています。
入職後だけでは間に合わない?「入職前」から育てるという選択肢
「教育してから紹介する」即戦力育成型モデルとは
外国人介護士の日本語教育を入職後の現場だけに頼ると、立ち上がりに時間がかかり、現場の負担も大きくなりがちです。そこで有効なのが、入職前の段階から外国人介護士に日本語と介護技術を習得してもらう「即戦力育成型」という考え方です。
具体的には、採用が決まってから入国するまでの期間(目安として4〜6ヶ月程度)を使い、日本語研修と介護技術研修を並行して進めていく流れになります。日本語研修では、日常会話に加えて、介護現場で頻出する言い回しや専門用語を、実際の業務場面に沿って学びます。介護技術研修では、基本的な介助の型や、ご利用者への声かけの仕方など、現場に入ってすぐに実践できる内容を身につけます。この2つを入職前に並行して進めておくことで、入職時点である程度「日本語で介護の話ができる」状態を作っておくのがねらいです。
入職前教育がある場合とない場合の立ち上がりスピードの違い
同じ外国人介護士でも、入職前教育の有無によって、現場での立ち上がり方には明確な違いが出てきます。
| 比較項目 | 入職前教育がない場合 | 入職前教育がある場合 |
|---|---|---|
| 入職時点の日本語力 | 日常会話レベルにとどまることが多い | 介護現場で使われる言い回しにも、ある程度慣れている |
| 現場教育の中心 | 日本語と介護技術を、基礎から並行して教える必要がある | 現場ならではの細かな業務の流れや実践的な指導に集中しやすい |
| 指導担当者の負担 | 基礎的な日本語や介護用語の説明も必要となり、負担が大きくなりがち | 基本的な用語や表現を事前に学んでいる場合、負担を軽減しやすい |
| 外国人介護士本人の様子 | 業務に慣れ、自信を持てるようになるまで時間がかかりやすい | 業務の見通しを持ちやすく、仕事に取り組む自信につながりやすい |
※入職前教育の効果は、研修内容や本人の日本語力、職場の受入れ体制によって異なります。介護用語や現場での会話、基本的な業務の流れを事前に学ぶ機会を設けると、入職後の指導を進めやすくなります。
教育をしてから紹介するという一気通貫の仕組みがあれば、外国人介護士が入職した時点である程度の日本語力と介護の基礎知識を備えているため、現場での教育負担を大きく減らすことができます。ミャンマー・インドネシア・ベトナム・ネパールなど、対象となる国はさまざまですが、どの国籍であっても、入職前の準備が丁寧であるほど、現場での定着はスムーズになりやすいと感じています。日本語教育を入職後だけの課題と捉えず、採用の入り口から計画的に準備することが、結果として現場にとっても安心につながります。
外国人介護士の日本語教育の体制づくりに不安がある場合は、入職前教育を含めた受け入れ方法について、まずはお気軽にご相談ください。
外国人介護士の日本語学習を続けさせる定着支援の視点
学習だけでなく生活・仕事・感情面のサポートが上達を左右する

外国人介護士の日本語教育は、一度研修をして終わりというものではありません。学習を継続してもらうためには、仕事や学習面だけでなく、生活面や感情面へのサポートも合わせて考える必要があります。慣れない環境で不安を抱えたまま学習だけを求めても、なかなか力は伸びていかないものです。
定着支援は、大きく4つの軸で考えると整理しやすくなります。
- 生活面: 住居や生活手続きなど、日常生活の土台を整えるサポート
- 仕事面: 業務の進め方や職場のルールを、丁寧に繰り返し伝えるサポート
- 学習面: 入職後も日本語学習を継続できる機会や教材を用意するサポート
- 感情面: 不安や悩みを相談できる窓口を持ち、孤立させないサポート
たとえば学習面では、入職後も定期的に日本語力を確認する機会を設け、伸び悩んでいる部分があれば早めに気づける仕組みを作っておくと安心です。感情面では、現場の上司だけでなく、母国語で相談できる窓口や、同じ国籍の先輩スタッフとつながれる場があることも、学習意欲を保つ支えになります。
よくある失敗パターン
外国人介護士の日本語教育がうまくいかない施設には、いくつか共通する傾向があります。
①入職時の研修だけで終わってしまう
入職直後にまとまった研修を行っても、その後のフォローがなければ、学んだ言葉は現場で使う機会がないまま薄れていきます。日本語教育は一度きりの研修ではなく、入職後も続く前提で組み立てる必要があります。
②現場の忙しさで、振り返りの時間が取れない
「わからなかった言葉」を確認する時間がないまま業務が進むと、小さなつまずきが積み重なり、質問しづらい空気にもつながります。短い時間でも、定期的に立ち止まる機会を設けておくことが大切です。
③成長が見えず、意欲が下がってしまう
日本語の上達は、本人にも周囲にも実感しにくいものです。できるようになったことを言葉にして伝えないままでいると、努力が報われていないと感じ、学習への意欲が下がってしまいます。
④生活面の不安を後回しにしてしまう
住居や各種手続き、日々の暮らしへの不安を抱えたままでは、学習にまで気持ちが向きません。仕事や学習だけでなく、生活面や感情面の土台が整ってはじめて、日本語力は伸びていきます。
⑤教える役割を一人に任せきりにしてしまう
担当者が一人で抱え込むと、その人の負担が大きくなるだけでなく、忙しい時期に教育が止まってしまう原因にもなります。複数のスタッフで関わる体制が、継続の支えになります。
まとめ|外国人介護士の日本語教育は「入職前」から始めると現場が変わる
外国人介護士の日本語教育について、ポイントを整理します。
- 試験のレベルと現場で求められる日本語力にはギャップがあり、外国人介護士を受け入れたあとの教育が欠かせない
- 写真やイラスト、やさしい日本語、メンター体制や振り返りの時間など、現場教育の工夫が土台になる
- 外国人介護士の日本語力は入職前(目安4〜6ヶ月)から育てる「即戦力育成型」の仕組みが、現場の負担軽減につながる
- 外国人介護士の日本語教育は単発で終わらせず、生活・仕事・学習・感情の4軸で継続的に支えることが大切
- 介護人材の不足が続く中で、日本語教育は一時的な対応ではなく、長期的な仕組みとして整えることが求められている
外国人介護士の日本語教育は、現場だけで抱え込む必要はありません。ASCare(アスケア)では、採用から定着までを一気通貫で支援し、現場の皆さまに寄り添いながら、安心して外国人財を迎え入れられる環境づくりをお手伝いしています。まずは無料で資料請求からご検討ください。
日本語教育がなかなか続かない施設には、共通するつまずきのポイントがあります。ASCareでは、3,000人以上の外国人財と歩んできた経験をもとに、そのつまずきを早めにとらえ、生活・仕事・学習・感情の4つの軸で継続的に寄り添う定着支援を行っています。日本語教育を現場だけで抱え込まず、共に育てていく体制づくりについて、お気軽にご相談ください。
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