2025年4月21日、これまで施設介護のみ許可されていた特定技能「介護」を取得している外国人財が訪問介護の現場で働けるようになりました。
訪問介護の人手不足は、介護業界の中でもとりわけ深刻です。「求人を出しても応募が来ない」という状況が何年も続いている事業所は少なくないでしょう。今回の解禁は、そうした現場にとって大きな転機になります。
この記事では、訪問介護解禁の背景と具体的な要件、受け入れにあたって押さえておくべき注意点をまとめました。特定技能「介護」の制度全体についてまず確認したい方は「特定技能「介護」とは?制度の仕組みと受け入れ条件をわかりやすく解説」をご覧ください。
なぜ訪問介護で特定技能が解禁されたのか
訪問介護の人手不足はどれほど深刻か
訪問介護員(ホームヘルパー)の有効求人倍率は、令和5年度(2023年度)で14.14倍です(厚生労働省「介護人材確保の現状について」2025年5月)。求職者1人に対して14件以上の求人がある計算で、介護職全体の有効求人倍率(約3.5倍前後)と比べても突出しています。
令和5年度の介護労働実態調査では、訪問介護事業所の81.9%が「人手不足」と回答しています。施設介護より採用が難しい構造的な問題を抱えており、日本人の採用だけでは対応しきれない状況が長く続いてきました。
訪問介護が解禁になるまでの経緯
特定技能「介護」は2019年の制度創設時から訪問系サービスが対象外とされていました。利用者の自宅で1対1のケアを行うという特性上、日本語でのコミュニケーションやトラブル対応に不安があるとされたためです。
しかし人手不足の深刻化を受け、2024年3月に政府が訪問介護への拡大方針を表明。2025年3月11日に運用方針が閣議決定され、同年4月21日に施行されました(厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」)。訪問介護のみに適応される追加要件を設けることで、サービスの質と安全性を担保する仕組みになっています。
訪問介護で外国人財を受け入れるための要件
特定技能を所持している外国人財に求められる要件

通常の特定技能「介護」の要件(介護技能評価試験 + 介護日本語評価試験 + 日本語能力試験N4以上またはJFT-Basic)に加えて、訪問介護では以下の追加要件があります。
- 介護職員初任者研修の修了: 訪問介護の基礎知識と技術を体系的に学んでいることが前提です
- 介護事業所等での実務経験1年以上が原則: 施設介護を含む介護現場で一定の実務経験を積んでいることが前提です
つまり、来日してすぐに訪問介護に従事するのではなく、まず施設介護などで経験を積んでから訪問の現場に入る流れが基本になります。各施設の例外運用を前提にするのではなく、厚労省が示す原則要件に沿って準備するのが安全です。
また、訪問介護事業所が特定技能を所持している外国人財を受け入れるためには、事前に適合確認申請を行う必要があります。この申請は、事業所が外国人介護人財を適切に従事させる体制を有していることを確認するための重要な手続きです。申請には、書類の提出や巡回訪問、定期報告などが必要で、事業所はこれらの要件を満たす必要があります。(公益財団国際厚生事業団 適合確認申請方法・提出書類)
受入事業所が遵守すべき5つの事項
訪問介護で外国人財を受け入れる事業所には、以下の5項目が求められます。
① 訪問介護の基本事項に関する研修の実施
施設介護とは異なる訪問介護固有の業務(移動、利用者宅での対応、生活援助など)について、入職時に研修を実施します。
② サービス提供責任者等による同行訓練
外国人財が一人で訪問する前に、一定期間はサービス提供責任者や先輩職員が同行してOJTを行います。利用者の生活習慣や状態に配慮したケアができるよう、現場で丁寧に教える期間です。
③ キャリアアップ計画の作成
外国人財と一緒にキャリアアップ計画を作成します。業務の内容や将来の目標について丁寧に説明し、本人の意向を確認しながら計画に落とし込みます。
④ ハラスメント対策
訪問先で発生しうるハラスメントへの対策として、マニュアルの作成や相談窓口の設置が必要です。外国人財が安心して働ける環境を整えることが事業所の責任となります。
⑤ ICTを活用した環境整備
訪問先で不測の事態が発生した場合に適切な対応ができるよう、情報通信技術(ICT)の活用を含めた連絡体制を構築します。タブレットやスマートフォンを使い、いつでも事業所に相談できる仕組みを整えておくことが求められます。

施設介護との違い ― 訪問介護で気をつけるべきこと
「1対1」の現場で求められる対応力
施設介護では、困ったことがあればすぐ近くにいる先輩や同僚に相談できます。しかし、訪問介護は違います。利用者の自宅で1対1のケアを行うため、基本的にはその場で自分が判断しなければなりません。
この違いは、外国人財にとって大きな壁になりえます。日本語での報告や相談はもちろん、利用者の体調変化への気づき、緊急時の対応判断など、求められるスキルの幅が広くなります。
だからこそ、前述の「同行訓練」と「ICT環境整備」が重要です。一人で判断できないときに、すぐに事業所へ連絡して指示を仰げる体制があるかどうか。この仕組みが整っていれば、外国人財も安心して訪問に出ることができます。
ご利用者・家族への説明の進め方
訪問介護では、利用者の自宅というプライベートな空間にケアに入ります。施設よりも心理的なハードルが高く、利用者やご家族が不安を感じやすい場面です。
事前の説明では、以下のポイントを丁寧に伝えることが大切です。
- どのような経験を持つ人財か: 初任者研修を修了し、介護現場で実務経験を積んでいることを具体的に説明します
- 同行期間があること: 最初はサービス提供責任者が一緒に訪問するため、いきなり一人で来るわけではないと伝えます
- 連絡体制が整っていること: 訪問中もICTで事業所とつながっており、何かあればすぐに対応できることを説明します
施設での受け入れ経験がある事業者でも、訪問介護では改めて利用者・家族への丁寧な説明が欠かせません。外国人財の受け入れに不安を感じる施設への対処法は「外国人介護士の受け入れが不安な施設長へ|5つの不安と解決策」でも詳しくまとめています。
「訪問介護での外国人財の受け入れを検討しているが、何から準備すればよいかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。訪問サービスの現場を50年以上にわたり運営してきたスタッフが、貴事業所に合った体制づくりを一緒に考えます。
訪問介護で外国人財を活かすために事業者ができること
来日前教育で訪問介護の基礎を身につける

訪問介護に配置する前に、施設での実務経験が必要になることは先述のとおりです。しかし、その前段階である来日前の教育がどこまで充実しているかが、現場の負担を大きく左右します。
ASCareでは、即戦力育成型の教育プログラムを採用しています。来日前に介護の基礎技術と日本語を徹底的に学ぶため、施設に配属された時点で「ゼロから教える」負担が発生しません。施設での経験を着実に積んだうえで、訪問介護の現場に移行するステップを計画的に設計できます。
また、ASCareは、50年以上にわたり全国で訪問入浴介護を提供してきた経験から、訪問サービスならではの難しさを深く理解しています。
外国人財には、接遇マナー研修などの教育カリキュラムを通じて、利用者様のご自宅を訪問する際のご家族への挨拶や礼儀を大切にするよう指導しています。
同行期間を「育成の期間」として設計する
制度上求められる同行訓練を、単なる義務としてこなすのではなく、「育成の期間」として積極的に活用することをおすすめします。
同行期間にやっておくべきことの例をいくつか挙げます。
- 利用者ごとの注意点をリスト化する: 利用者の性格や生活習慣、配慮すべき点をまとめたシートを一緒に作成します
- 緊急時の対応手順を繰り返し確認する: 転倒時、体調急変時など、想定される場面ごとの対応を一つずつ確認します
- 報告のテンプレートを用意する: 訪問後の報告を定型文で書けるようにしておけば、日本語の壁が低くなります
同行を通じて信頼関係を築くことで、利用者も外国人財に安心感を持つようになります。ASCareでは入職後も定着支援のスタッフが寄り添い、仕事面だけでなく生活・学習・感情面まで含めた4軸の支援体制で外国人財を支えています。
まとめ
訪問介護での特定技能外国人の受け入れについて、要点を整理します。
- 2025年4月21日に解禁: 一定の条件下で、訪問介護などの訪問系サービスへの従事が可能になりました
- 訪問介護における外国人財の追加要件: 初任者研修の修了と介護事業所等での実務経験1年以上が原則必要です
- 事業所の遵守事項は5項目: 研修の実施、同行訓練、キャリアアップ計画の作成、ハラスメント対策、ICT環境整備が求められます
- 施設介護との違い: 1対1の現場で判断力が求められるため、ICTによる連絡体制と丁寧な同行訓練が重要です
- 利用者・家族への事前説明: 経験や同行期間、連絡体制を丁寧に説明することで不安を和らげられます
訪問介護の人手不足は、もはや日本人の採用だけでは解消が難しい段階に入っています。今回の解禁を「受け入れの第一歩」として活かすために、計画的な準備を進めていくことが大切です。外国人財が安心して利用者のもとへ向かえる体制を整えること。その先に、訪問介護の現場を支える新しい仲間との信頼関係が生まれていきます。
参考リンク
- 厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」
- 厚生労働省「介護人材確保の現状について」(2025年5月)
- 厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」
- 出入国在留管理庁「特定技能制度について」
ASCareは訪問入浴介護の事業を50年以上にわたり全国で展開し、累計3,000人以上の外国人財を受け入れてきました。紹介料は無料です。来日前の教育から、紹介、入職後の定着支援まで一気通貫で寄り添います。